胃がんの原因は本当にピロリ菌?

 私たちの胃や腸には多くの細菌が生息しており、多くは病原性がなく、消化を助けるなどの有用な働きを持っています。ところが、胃の粘膜に生息するピロリ菌は、胃炎をはじめ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの様々な病気を引き起こすと問題視されています。

 現在、世界で約半数がピロリ菌の感染者だと考えられ、日本では約6千万人が感染しているとされています。とくに50歳以上に感染者が多く、60~70パーセントが感染者であるとする調査結果もあります。

 日本では毎年20万人から25万人が新たに胃がんと診断されています。6千万人がピロリ菌に感染しているのに、25万人しか胃がんにならないのであれば、ピロリ菌と胃がんの関係を疑問視する声が上がるのもしかたがないのかもしれません。


 「ピロリ菌に感染しているからといって、高い確率で胃がんになるわけではありませんが、疫学研究により、胃がん患者の胃粘膜に高頻度にピロリ菌が確認されています。発がんメカニズムはまだ明らかになっていませんが、ピロリ菌が産生するタンパク質(CagAというタンパク質)を胃の粘膜細胞に注入しがんを誘発するのではないかとの仮説が提唱されています」

 ピロリ菌が産生する毒素(VacAタンパク質)には胃粘膜の免疫を弱める働きがあるとの指摘もあり、間接的に胃がんの発症を促進するとも考えられているのです。


 1994年、ピロリ菌感染は胃がんの確実発がん因子であると世界保健機関(WHO)によって認定されました。最高の危険性を示す「グループ1」に分類されました。強力な発がん性で知られるタバコやアスベストと同じ分類です。神谷さんはこう続けます。

 「ピロリ菌による感染が進むと萎縮性胃炎になります。病理学の見地からは、萎縮性胃炎は、前がん病変と考えられています。また、粘膜上皮細胞ががん化する胃がんに加え、胃のリンパ節にがんができる胃MALTリンパ腫もピロリ菌の関連が疑われています。胃潰瘍、十二指腸潰瘍を引き起こすという問題もありますから、ピロリ菌に感染しているなら、除菌することをお勧めします」


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